成合 次雄 隊員(75歳) 日向営業所所属/勤務歴1年9ヶ月
2026年
前職は、過酷な水道配管工。そして、一歩間違えれば命を落とす建物の解体業。長年、常に危険と隣り合わせのハードな建設現場を渡り歩き、70歳を過ぎてから警備の世界へと飛び込んだ男がいます。
セキュリティロード日向営業所、成合(なりあい)さん、75歳。
警備歴は2年弱と決して長くはありませんが、現場に立った瞬間、かもし出されるその安心感はベテランそのもの。「片側交互通行(片交)」を担う成合さんが、現場で直面した本物の恐怖、そして未経験からスタートする仲間の足元を照らす「シニアの知恵」を、熱い想いと共に語ってくれました。
1. 「停止合図を無視して突っ込んでくる車」九死に一生のトラウマを、絶対的な安全への執念に変えて
現在、成合さんは主に延岡市の電気工事現場などで、車両の片側交互通行を担当しています。一人で一箇所を任される現場が多く、彼の判断一つにドライバーや作業員の命が懸かっています。
「警備を始める前は、一般のドライバーと同じで、旗を振れば車は当たり前に止まってくれるものだと思っていました。でも、現実は違った。この2年弱の間に、こちらの停止合図を完全に無視して突っ込んできそうになった車に、3回も遭遇したんです。ガチャンコ(衝突事故)になる一歩手前、タイヤが悲鳴をあげるような距離で止まった。あの時の心臓が止まるような恐怖は、今でも頭の中に『トラウマ』として焼き付いています」

成合さんはその恐怖から逃げるのではなく、自らの武器に変えました。
「だからこそ、私は現場で絶対に事故を起こさせない。危ないなと感じる車が来たら、路肩に縮こまるのではなく、自身の安全を確保した上で、体を大きく使ってこれでもかと存在をアピールする。車をコントロールするんじゃない、命を守るんだという強い執念を持って、毎日の現場に立っています」
2. 水道屋30年、解体業3年。70歳を過ぎて突きつけられた限界と、「定年のない居場所」
成合さんの圧倒的な強みは、30年にわたる水道配管工事や解体業の経験から、工事全体の「空気感や危険予測」が最初から頭に入っていることです。しかし、そんな熟練の職人であっても、年齢による肉体の限界と直面していました。
「水道屋の時代は、狭い床下に潜って防蟻剤のきつい臭気にさらされることも多く、年齢を重ねるにつれて体調への不安が大きくなり引退しました。その後に入った解体業では、70歳になった時に会社から『万が一の事故があると取り返しのつかないことになる。もう高い屋根には登らずに、下をやってくれ』と言われ、事実上の定年を迎えました。まだ働けるのに……と、悔しさと焦りの中で街を歩いていた時、目に入ったのがセキュリティロードの募集看板でした。『ここなら、年齢を理由に牙を抜かれることもない。もう一度、前線で勝負できる』そう思い、未経験の業界でしたが、すがるような気持ちで応募したんです」
年齢ではじかれる悔しさを知っているからこそ、成合さんは今、現場に立てる喜びを誰よりも噛み締めています。
3. 「最初は足腰が悲鳴を上げるほど大変。でも、半年待て」先輩から受け継いだ命の歩法
「正直、最初の1ヶ月は『前の過酷な仕事の方が楽だったかも』と後悔して、白い歯を食いしばりました(笑)」と成合さんは振り返ります。
重いものを運ぶわけではない。しかし、真夏の照り返しの中、ただじっと立ち続けることの過酷さは、やってみた者にしか分かりません。時間が経つにつれて足や腰が痛み、心が折れそうになった成合さんを救ったのは、現場の先輩隊員たちの言葉でした。
『成合さん、最初はみんなきつい。でも半年もすれば、不思議と体がこの現場に慣れてくるから。騙されたと思って耐えてごらん』
さらに、先輩は具体的な「知恵」も授けてくれました。
「ただじっと突っ立っていると血流が止まる。だから、現場の安全に支障が出ない範囲で、2〜3メートルほど前後にゆっくり往復して歩くんです。そうすると足の血行が劇的に良くなって、痛みがスッと楽になる。その知恵に私は救われました。だからこそ、先月入ってきたばかりの新人さんに出会うと、当時の自分を思い出して声をかけるんです。『今は足が悲鳴を上げるほどきつい時期だけど、絶対に慣れるから大丈夫だよ』って。私たちが繋いできたバトンを、次の仲間へ優しく渡したいんです」
4. 無事故で終えた夕暮れ時。職人たちと交わす「お疲れさん」の言葉が、俺のやりがい

車通りが激しく、一分一秒の判断を迫られる忙しい現場ほど、成合さんは不思議と疲れを感じないと言います。
「車が少ない現場の方が、かえって時間が長く感じて足腰に響くんですよ(笑)。車が行き来する忙しい現場は緊張感がありますが、自分の誘導でスムーズに流れた時はあっという間に時間が過ぎます。
何よりのやりがいは、一日の業務が何事もなく、無事故で無事に終わった瞬間の『やり遂げた感覚』ですね。現場の職人さんや周りのスタッフから『成合さん、今日も助かったよ、お疲れさん!』と声をかけられた時、心の底からホッとして、誇りが込み上げます。今日も一日何ごともなく無事に終わった。その毎日の積み重ねが、今の私のプライドであり、生きている証拠です」
「体が動くうちは、絶対にこのセキュリティロードで、仲間と共に頑張り続けたい」
そう語る成合さんの眼差しには、幾多の危険な現場を生き抜いてきた職人としての強烈なプライドと、新しく入ってくる仲間への深い愛情が満ち溢れていました。

