真謝 永諄 隊員(65歳) 熊本営業所所属 / 勤務歴15年5カ月
※2025年インタビュー当時
一般道・高速道路それぞれの危険性を理解する
警備員として交通誘導に携わり15年間を迎えたなか、これまで一般道をはじめ高速道路の交通規制業務にあたってきました。車のスムーズな誘導はもとより、作業中である業者の方々と自分達隊員の安全を守るべく、 “常に危険と隣り合わせ”という意識を持ち日々仕事に向き合っています。
特に高速道路では、時速100kmで走る車両に対して規制帯に車が侵入しないよう後備警戒を行いますが、車の走行スピードの速さにはやはり怖さを感じます。規制帯を設置しその後は交通流の監視役に徹する高速警備では、少しの気の緩みが大事故に繋がるリスクがあるため、作業中は “この行動をした場合このような危険がある”と考えながら任務にあたります。
一方一般道においては、高速道路とは異なる性質の危険性があります。工事規制などの現場では、スピードを落としてくださるドライバーもいますが、あえてスピードを出してくる車も実際にはいます。また、例えば交差点付近の警備では十字路のため四方向を見る必要があり、前後左右全ての道を行き来する車、自転車、歩行者に注意を向けるため複雑さが増します。
状況に応じて様々な難しさはありますが、ただ、現場では日々『無事故無災害』であることが一番重要です。
私自身はこれまで大きなケガなく仕事をしてきましたが、基本的な動作に加え染みついた危険回避の感覚を大事にしており、現場責任者として「今日も何もなくてよかったね」と思えるようチームに安全への心構えやアドバイスを伝えているところです。
前職の経験が大いに活きる
警備の仕事はチームで動くため、人間関係が良好であることが大切です。そのため新人の方と組んだ際にはコミュニケーションを大切にしています。その中で私が最初にお伝えするのは、「お客様からみれば、制服を着ている人は全員がベテラン。新人だとしても仕事への姿勢や対応に気を配りながら作業をしましょう」ということです。
年齢差のあるコミュニケーションは工夫も必要ですが、新人がついてこられるアドバイスや成長に繋がる言葉がけを心掛けており、そうした面が反映されてか異年齢の方に接しやすさを感じて頂いているようですね。
実は円滑なコミュニケーションを築くにあたり役立っているのが、前職での経験です。以前は住宅関係の営業に従事しており、部下の指導経験が警備業でも大いに活かされています。
警備の現場では入社当初は色々な先輩についてまわることがあります。そうした時に、『昨日の先輩にはこのように指導されたが、今日の先輩は違う』など戸惑うことは少なからずあるものです。
基本のルールは同じでも教え方は十人十色。色々な先輩のやり方を見た後には、家に帰って鏡を見ながらこのやり方で良いのだろうかと勉強すること、また家族に旗の揚げ方を見てもらうなど自分の中で一番良い方法を見つけることが大切です。
私は前職や今の仕事で得た経験則を活用し相手に伝わる言い方を考えアドバイスをしますが、色々な人がいる中で“自分のやり方を見つけて良いのだよ”、と伝えることが働く仲間の成長や安心感に繋がればと思っています。
仕事の醍醐味は、誘導合図が伝わるその瞬間に訪れる

警備の仕事をしていて一番の楽しみは、自分の誘導合図がドライバーや通行人の方々に伝わった瞬間に訪れます。
交通誘導では停止や進行などを表す基本動作があり、私たちの動き一つひとつが相手に指示を伝えるコミュニケーション方法となります。多くの場合、誘導灯や手旗の動きからこちらの意図を察して頂けますが、しかし、なかには合図の意味が理解されないケースもあります。例えば進行を促す合図を送った場合、同じ動作でも見る人によってはこちらの意味するところが通じないケースもあるのです。
そうした方々に対して、『どのように自分が誘導すれば分かってくれるだろう?』と相手の気持ちになって考えます。
そしてその方にピタリとハマる誘導ができたとき、自分のやり方を理解してくれたことに対してとても嬉しさを感じます。
誘導灯1本で気持ちと気持ちが通じ合う、と言うのでしょうか。その瞬間に込み上げてくる想いは、警備の仕事ならではのものであり大変面白いです。
前向きに仕事をする原動力はどこにあるのか、と聞かれたらそれは仕事の楽しさを自ら見つけ出すこと、だと思います。私自身も入社して2か月ほどの頃までは慣れない仕事にキツさを感じていました。しかし慣れてくるにしたがって徐々に楽しくなってきたのです。
自分の誘導とドライバーの方の息がピタッとあった時の感覚や人とのコミュニケーションなど、仕事の中で自分が成長していく楽しみを見つけていくこと、生み出していくことは働く力になります。
また原動力と言えば、警備業の醍醐味はお客様や通行者の方々に「ありがとうね。」と声をかけて頂くことにもあります。
日々の仕事の中で“ありがとう”の一言をかけて頂けることで心が豊かになりますね。
考えるのは“協調性”と“過度な期待を持たない”こと
私たちの仕事はチームワークがとても重要です。例えば2名~4名のグループで現場に入る際には、一人ひとりに役割があり全てを取りまとめてスムーズに任務にあたることが私の使命だと考えています。そのため現場でいつも考えているのは協調性です。しかし、他方では“過度に期待は持たない”ということも念頭にあります。
『ここを任せたからこうしてくれるだろう』と期待し、それが叶わなかったときに注意や反論が飛び交えば現場の雰囲気が乱れ、やり取りを聞いている隊員も嫌な気持ちになるものです。
任せたよ、と伝えはするけれど完璧は期待しない。その代わりチームワークでカバーし合う。個人的にはそうしたコミュニケーションを大切にしています。現場では隊員同士は働きやすさも感じており、長く働くためにも良好な環境は大切です。
加えて警備の仕事を続けるにあたり自分の中で大切にしているのが、自然体でいることです。様々な人間模様があるなかで相手のことを考えすぎたり、自分がどう思われているかを気にしすぎたりすればストレスもたまります。そうではなく、良い意味で受け流すということを意識として持っています。60歳になって気づいた仕事観ですが、気持ちも楽になりストレスが少ないぶん体も元気で日々の仕事も楽しくあります。
また、仕事をしていると休日も充実します。休みの日には奥さんと九州の道の駅巡りを楽しみます。福岡、大分、宮崎など朝早くから出かけ、美味しいものを食べて日帰りで戻ってくる。言ってしまえば、リセットですね。
道の駅には色々な特徴があるので、休日を使って見て回る満足感は大きいです。
やはり働けるうちには身体を動かし、頭を活性化させていると停滞せずに元気でいられますね。
同世代を盛り上げていきたい
職場には様々な年代の方がいますが、私は特に同世代の仲間を盛り上げていきたいと思っています。
警備の仕事は単純なものではなく、ときに業者の方から注意を受けることもあります。そうした際に同世代が落ち込んでいる姿を見るのは辛いものがあります。だからこそ、「がんばっているよ」など労いの言葉を率先してかけるようにしています。
警備の仕事は“人”ありきです。私は昨夜から今朝にかけて熊本豪雨に係る高速規制を行っていましたが、警備業は日常を守る仕事であり、“事件は現場で起きている”というように、現場で働く私たちが色んなものを支えているのだと思います。
だからこそ、現場を知る私たちの声を会社の幹部の方々に吸い上げてもらう、というのも非常に大切であり、同世代をはじめ、チームの活力を高めよい環境をつくっていきたいと思います。
セカンドキャリアを考えている方へ
私は前職の営業職から全く畑の違う警備業に飛び込みましたが、飛び込んだ世界は自分にとって正解でした。
石の上にも三年。
この仕事は体力あっての職業ですが、先輩から教わり自分で工夫をすることで、早い段階から上に上り詰めるチャンスが巡ってきます。帰宅して鏡を見て練習するなどの地道な頑張りがキャリアに反映されるからこそ、成長する喜びもあるのです。
正直、楽しいですよ!
警備業に飛び込むのであれば、希望としては最終的にはプロを目指してほしいなと思います。プロと言うと少々重たいかもしれませんが、机上だけでなく現場を熟知し仲間といっしょに安全を守ることのやりがいはまた一入です。
私は60歳になったときに “あと5年頑張ろう”と決めました。今、65歳を迎え次は70歳まで頑張ろうと思っています。病気をせずに一日一日を健康で過ごすことを考え、日々を充実させていきたいと思います。