「就職列車」から始まった労働人生。84歳、自転車で現場へ向かう現役警備員が語る“生涯現役の秘訣”と“愛されるコミュニケーション”

 鶴田 孝隊員(84歳)  延岡営業所所属/31年2カ月
 2026年5月27日

宮崎県延岡市で、御年84歳にして今なお現役の交通誘導警備員として活躍する。そんな驚異のバイタリティを持つのが、セキュリティロード延岡営業所のレジェンド、鶴田 孝(つるたたかし)さんです。 中学卒業後に「就職列車」で都会へ向かってから約70年、ひたすら働き続けてきた鶴田さん。

「仕事が一番の面白み!」

とニコッと笑うそのお人柄と、長年培った「人から愛されるチームワークの極意」をたっぷりと伺いました。

1. 84歳の今も現役!相棒の「自転車」で現場を駆ける

現在、鶴田さんが主に担当しているのは、生コンクリート車両などが頻繁に出入りする、緊張感のある建設現場の交通誘導です。驚くべきは、その現場へ向かう方法。鶴田さんは車の免許を持っておらず、今でも毎日、自ら自転車のペダルをこいで現場へと向かいます。

 「周りの同年代の友達はみんなもう仕事を辞めて、何もしておらんのですよ。お前はなんでそんな歳まで働いてるんだって言われたら、『金がないからじゃない?』って笑い飛ばすんです。たまに頭がクラクラとすることもあるけれど(笑)、健康状態はすこぶる良好。天気がいい休日には、大好きな魚釣りに行って、釣った魚を友達に配るのが一番の楽しみですね。人間、一つでも熱中できる楽しみがあると、それが元気の源になるんだ」と話します。

2. 就職列車、自転車職人、そして「寿屋」の警備へ。あっという間の30年

鶴田さんの歩んできた人生は、日本の高度経済成長の歴史そのものです。 

「中学を卒業してすぐ、当時の『就職列車』に乗って、大阪のクリーニング店へ働きに出ました。19歳で宮崎に 戻ってからは、叔父の紹介で延岡の自転車屋に弟子入りしてね。パンク修理やタイヤ交換の技術を13年ほど磨きました。その後、安い輸入自転車が出回り始めたのを機に、セキュリティロードの門を叩いたんです」 警備の道に入って今年で約30年。その大半を、かつて延岡市にあった百貨店「寿屋(ことぶきや)」、その後解体された跡地に建設されたスーパー「UFO」の駐車場警備として過ごしてきました。 「夏になれば寿屋の7階屋上でビアガーデンがあって、その警備もやりました。ある時、店長から『鶴田さんは自転車に詳しいから』と頼まれて、寿屋のカンカン広場に並んだ特売自転車の販売を、警備の合間に手伝ったこともあったなぁ。本当に色々な経験をさせてもらって、気づけばあっという間の30年でしたね」

3. 「イラッとしても、すぐ忘れる」寿屋で培った人見知りゼロの極意

長く仕事を続ける中で、鶴田さんが何よりも大切にしているのが

「コミュニケーション」

です。特に2人一組で立つ現場では、無線を駆使した密な連携が欠かせません。時には少し苦手な相手と組むこともありますが、鶴田さん流の「切り替え術」で現場の空気を常に明るく保っています。 

「2人現場の時は、とにかく話し合いながらやることが一番大事。もし現場で何かあってイラッとすることがあっても、私はその場限りにしちゃう。次の瞬間にはパッと忘れとるんです(笑)。周りからは『お前はバカか』なんて言われることもあるけれど、いつまでも考え込むより忘れた方が絶対にいい。それに、知らない人と目と目が合ってもすぐに声をかけちゃいます。これは長年、寿屋の駐車場でたくさんのお客様を相手にしてきた『癖』のようなものですね。人見知りは全くありません」

4. シニアの仲間へ伝えたい「笑顔の挨拶」と、まさかの再会

「今やっている警備の仕事そのものが、一番のやりがいであり、面白みです」

と語る鶴田さん。その温かい人柄に惹かれ、これまでに鶴田さんの紹介で2名のシニア警備員がセキュリティロードに入社し、現在も一緒に働いています。これから警備業界へ一歩を踏み出そうとしているシニアの仲間たちに向けて、鶴田さんはアドバイスを送ります。 

「新しく入ってくる人たちには、いつも言っているんです。お客様に対しては絶対に笑顔を見せなきゃいかん。挨拶をする時も、顔を背けて話してはダメ。相手の目をしっかり見て、心を込めて挨拶をすることが何より大切だよ。」と。

そんな鶴田さんには、最近とても嬉しかった出来事があります。

 「以前、大学3年生の若い子に『うちの会社に働きに来んね』と声をかけたことがあったんです。その時は入社しなかったんですが、この前、ある現場でたまたま一緒になったスタッフがいてね。『あれ?』と思ったら、その時の彼だったんです。『鶴田さんが言ってたから、俺ここに来て働くようになったよ』って言われてね。あぁ、自分の言葉が届いていたんだなと、本当に嬉しかったです」

「働くことが、生きる面白み」 

そう語りながら、今日も自転車にまたがり、現役最前線の現場へと向かう鶴田さん。その背中は、これからを生きるすべてのシニアスタッフの行く手を、明るく照らす誘導灯のように輝いていました。

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